法人を経営していると、一度は「事業承継」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
現在の収益や資金繰り、事業計画などには注力していても将来の「承継」についてはあまり考える機会がない方も多いでしょう。
そこで今回は、会社の未来に大きく影響する事業承継の基本と節税についてお話したいと思います。
事業承継の基本
事業承継とは、経営者が経営を継続するのが難しくなった時に今の事業を他の人間あるいは企業に引き継ぐことをいいます。
多くの場合は自分の子供などの親族か会社の役員などがその対象となるでしょう。
また、M&A(合併・買収)による親族外事業承継という方法も選択肢の一つとして挙げられます。
いずれにせよ、事業承継では「会社という名の資産(財産)を他者に譲渡する」ことになりますので相続税や贈与税の課税が発生するという点に注意が必要です。
特例事業承継税制について
特例事業承継税制とは、2016年4月1日より制定された制度で、特定の要件を満たすと会社の全ての株式について、贈与税が全額猶予されるというものです。
ここでは猶予という言葉を用いていますが、要件から外れない限り納税義務は発生しませんので、事実上の免除といえるでしょう。
そして特例事業承継税制が適用される要件については、まず会社が「中小企業」に該当するかどうかが一つです。
承継法上の中小企業とは「非上場である」こと、「資産管理会社ではない」こと、「医療法人や風俗営業会社に該当しない」こと、そして資本金や従業員数が以下を満たすことです。
・卸売業…資本金1億円以下、または従業員数100名以下
・小売業…資本金5,000万円以下、または従業員数50名以下
・サービス業…資本金5,000万円以下、または従業員数100名以下
・その他…資本金3億円以下、または従業員数300名以下
そして次に、後継者が以下を満たす必要があります。
・承継の翌日から5ヶ月を経過した時点で会社の代表者であること
・一族で50%を超える議決権を保有していること
・一族の中で筆頭株主であること
・総議決権数の10%以上を保有していること
最後に、承継前の経営者が以下を満たす必要があります。
・会社の代表権を有していること
・承継の直前に、一族で50%を超える議決権を保有していること
・承継の直前に、一族の中で筆頭株主であること
これらの要件を満たせば特例事業承継税制が適用され、高額な贈与税を納める必要なくスムーズに事業承継をすすめることができるのです。